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VC出身COOが語る、AndGAMERが「ゲーミングライフスタイルカンパニー」を目指す理由

「AIM1」「Void Gaming」などのゲーミングデバイスブランドを展開し、日本発のゲーミングライフスタイルカンパニー”を目指すAndGAMER。

2022年の法人化以降、毎年売上を2倍に伸ばし、月次売上も直近2年間で約8倍に成長した。2025年9月に行われた「東京ゲームショウ2025」では、数千人のファンやユーザーがAndGAMERのブースを訪れた。

今回インタビューするのは、2023年12月からAndGAMERのCOOを務める石井拓人だ。VC(ベンチャーキャピタル)からCOOに転身した石井は、なぜ異色のキャリア転換をしたのか。その理由と急成長の秘訣、これからのビジョンについて語ってもらった。

取締役COO 石井 拓人(いしい たくと・28歳)
東北大学工学部卒業後、同大学大学院医工学研究科を修了。新卒で独立系ベンチャーキャピタルのインキュベイトファンドに入社し、国内外のスタートアップへの新規投資を担当。AndGAMERへの投資検討も進め、その後取締役COOとして同社に参画。現在は、ビジネスサイドの総括を担当し、事業・組織戦略の立案やマーケティング総括に従事。一番好きなゲームは「League of Legends」。休日は友人ともっぱらサモナーズリフトに赴いている。

投資先から転職先へ。医工学出身のVCがAndGAMERを選んだわけ

── 大学院時代に“医工学”を専攻されていたそうですが、どのような分野なのですか?

医工学はその名のとおり「医学×工学」の分野で、医療ロボットを開発したり、人体のデータをAIで分析したりと、工学的な観点から医療を研究する分野なんです。

その中でもぼくが研究していたのは、「感覚の定量化」というテーマでした。物を触ったときの触感を、数値化・モデル化する研究です。

幼少期から剣道や野球といったスポーツをしてきて、複数のコミュニティに属しながら育ったので、「人」にすごく興味があったんですね。人の感覚や欲求が、その人ごとに異なるのはなぜなのか。そのメカニズムに興味がありました。

── 卒業後はVCになられたそうですが、なぜ医工学から投資の道へ?

大学院の研究室は、9割ほどが企業の研究職に就くような環境でした。ぼくも1つのことを突き詰めるのは好きですし、研究職にも魅力を感じましたが、その一方で、1つのことを軸足にしつつ、たくさんの人とコミュニケーションを取りながらビジネスに携わりたい、という思いがありました。

そこで文系就職を目指していたところ、友人の誘いでインキュベイトファンド(投資会社)の会社説明会に参加したんです。

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VC時代の石井氏

投資活動やアセットマネジメントを軸に、さまざまな業界と関わりながら、ポテンシャルある企業と共に成長していく。そうした仕事内容が自分の性格に合っていると感じ、2022年4月に新卒で入社しました。

入社後は、主にスタートアップのソーシング(企業の発掘・選定)から投資検討、投資決定後の継続支援までを担当していました。

── AndGAMERとの出会いについて教えてください。

入社1年目の冬ごろ、ゲーム領域のスタートアップを探していたところAndGAMERを見つけたんです。

ホームページを見て、プロダクトのデザインにも事業内容にも飛び抜けたセンスを感じましたね。

toC向けのハードデバイス事業は、在庫リスクも大きく難易度が高いんです。それを普通にやり遂げていて、プロダクトの口コミ評価も高い。気になってCEOの上森さんにDMし、1〜2回お話しさせてもらいました。

── VCとして注目したのが始まりだったのですね。

そのとき驚いたのが、上森さんの意思決定のセンスの鋭さです。

拠点は愛知県の地方の町で、20歳という若さでありながら、「これはやったほうがいい」「やらないほうがいい」といった経営判断がほとんど最適解だった印象です。

たとえば、「中国でパートナー工場を探す」といった取るべきアクションはすでに実行済み。事業計画も売上目標もないのに、やっていることに筋が通っていて、無駄がない。必要なことだけを見極めて動いていたんです。

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左:石井氏、右:CEOの上森翼氏

そうした経緯もあり、前職の関連会社に紹介し、投資実行に至りました。その後も継続支援をするなかで、上森さんがCOOを探していると知り、2023年12月、「じゃあぼくが行こう」と転職を決めたんです。

── 安定したVC職からスタートアップへの転身。不安や迷いはありませんでしたか?

当時よく聞かれたのですが、不安や迷いは本当にゼロでした。

VCの仕事は好きで、やりがいも感じていました。でもAndGAMERでは、より自分の価値を発揮しながら、世界で勝てる。その確信がありました。

VC経験をAndGAMERの成長エンジンに変えて

── AndGAMERでは、COOとしてどのような役割を担っていますか。

上森さんが開発サイドを統括し、ぼくはビジネスサイド全般を統括しています。事業戦略や売上計画を立て、それを実行するための組織形成や採用を行うのがメインです。

また、マーケティング、EC、コンテンツの各チームと話し合いながら施策を監修したり、ぼく自身が大型コラボレーションを獲得したりすることもあります。

── VCの経験が活きている、と感じることはありますか。

COOの業務はある意味、投資活動そのものなんです。

会社としてリソースをどこに投資して、いつまでにどんな規模で回収するかを判断する。本質的にはVC時代の投資判断と変わらないと考えています。

違うのは、VC時代は経営層との会話がメインでしたが、現在はコミュニケーションをとる社内メンバーの数や取引先が増え、「人」の要素がより強まったことでしょうか。

VC時代の経験は非常に活きていると感じます。

── AndGAMERでは「Void Gaming」「AIM1」「VIZARD CLUB」の3ブランドを展開していますが、その戦略を教えてください。

個々の戦略ももちろんですが、ブランドポートフォリオの最適化を意識しています。

エンタメ業界やto Cビジネスは比較的ボラティリティが高く、新ブランドやプロダクトが成功するかはリリースしてみないと分かりません。開発期間も1年前後と長く、リスクが高いビジネスです。

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だからこそ、複数ブランドを持つことでリスクを分散し、挑戦回数を最大化しています。

あるブランドの売り上げが好調なタイミングで、別ブランドの新商品開発に挑戦する。そうやってバランスを取りながら、全体最適を図っています。

2億円調達、販売台数5万台超え。COOから見た急成長の理由

── 2025年5月には、プレシリーズAで2億円の資金調達をされました。石井さんのネットワークから実現したそうですが、投資家の方々の決め手はなんだったのでしょうか。

大きく3つあると考えています。

まず、ゲーム・エンタメ市場がマクロトレンドに乗っていること。

次に、ハードデバイスには言語の壁がないので、グローバル展開しやすいこと。手に取ってもらえば分かる、これはぼくが「世界で勝てる」と確信した理由のひとつでもあります。

そして、当社がゲーミングデバイスメーカーとして日本で独自のポジションを築き、“平均年齢20代・メンバー全員がゲーマー”という稀有なチームで継続的にヒット作をリリースしていること。その実績を、評価いただいたのだと思います。

── 総販売台数が5万台を突破しましたが、ファンから支持される理由はなんだと思いますか。

ゲーマーのニーズに向き合い続けてきた結果だと思います。

ぼくたち自身がユーザーだからこそ、彼らが本当に求めているプロダクトを理解できる。そのこだわりが、ファンの方々に伝わっているのではないでしょうか。

── eスポーツチームや配信者とのコラボ製品も続々とリリースされています。

直近で反響が大きかったのは、10月にリリースしたVTuberグループ「にじさんじ」に所属するライバー様とのコラボです。

ライバー様本人のMVなどを担当されたイラストレーターの方々と合作でマウスパッドを制作したのですが、VTuberのファンの方にも喜んでもらえるストーリーをつくり込んだ結果、SNSでも数百万インプレッションという反響をいただきました。

── グローバル展開の現在地を教えていただけますか。

すでに海外のユーザーから注文があったり、海外代理店から声がかかって取り扱いが始まったりと手応えを感じています。今後は韓国、中国、アメリカへ進出を視野に入れていますね。

韓国については、すでにロッテベンチャーズ・ジャパンのサポートのもと具体的に動き始めています。同時にグローバル人材の採用も進めているところです。

デバイスブランドから“日本発のゲーミングライフスタイルカンパニー”へ

── “日本発のゲーミングライフスタイルカンパニー”となることを目指していますが、その理由を教えてください。

ゲーマーにとって、ゲーミングデバイスが日常生活の一部となっているからです。

たとえば最近、SNSで「#desksetup」というハッシュタグが、ゲーマーやデバイス好きの間で広がっています。

自宅のゲーム環境の写真を投稿するもので、自分の好きな色で統一したり、シンプルなデバイスでそろえたり、派手なマウスパッドでテンションを上げたり……ゲーム環境がもはやファッションの一部となっているんです。

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「シンプルなデバイスを使いたい気分の日もあるはず」との発想から生まれた「AIM1」シリーズ

── ゲーム環境が自己表現の場になっているのですね。

ゲームの楽しみ方も変化しました。昔は家族や友達と集まってやるのが普通でしたが、今ではオンラインゲームが主流です。

ちなみにぼくらは、ゲーマーは4つの層に分かれると考えています。

競技中心のプロゲーマー、毎日ゲームをするようなヘビーゲーマー、週末だけ楽しむようなライトゲーマー、配信を“見る専門”の方々。

また、自身で配信する方が増えたり、“見る専門”の方が好きな配信者に影響されゲームを始めたり、ゲームがより生活に溶け込んでいるのを感じます。

こうした変化を感じ取り、ゲーマーのライフスタイル全般を豊かにする企業を目指すようになりました。

── アパレルや空間デザイン、フードなど、異業種とのコラボ商品開発を視野に入れているそうですが、パートナー企業がAndGAMERと組むメリットはなんでしょうか。

AndGAMERの強みは、ゲーマーの生態系を理解していることです。彼らが本当に求めている製品やブランディングを熟知していて、それに応えることができます。

たとえば今、多くの企業がゲーム市場に参入し始めています。「東京ゲームショウ2025」にスポーツメーカーが初出展したり、クレジットカード会社がeスポーツチームとコラボカードを発行していたり。食品宅配サービスもeスポーツ大会のスポンサーをしています。

こうした異業種企業とAndGAMERが組むことで、価値ある製品やサービスを生み出せると考えています。

ぼくたちだけでは限界がありますが、各業界で強みを持つ企業とのコラボレーションなら、ゲーマーやマーケットにとって最良の形をつくれるはずです。

── 最後に、5年後のAndGAMERのビジョンを教えてください。

まずは今期の売り上げを前年比4倍にし、5年後には、「日本のゲーマー向けプロダクトといえばAndGAMER」というポジションを確立していたいですね。

そして、ゲーマーの生活をもっと彩り豊かにする存在として、事業規模も大きく成長させていきます。これからのAndGAMERに、ぜひご注目ください。


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